日曜日はプーレ・ロティ
川村明子(2019)
CCCメディアハウス
要約
フランス在住のフードライターが綴るフランスでの食生活にまつわるエッセイ。表題のプーレ・ロティを始めとして、パンやチーズ、たくさんの野菜や果物などが、食専門の記者ならではの豊富な食知識と豊かな表現で書かれている。
感想文
食への溢れんばかりの想いがひしひしと伝わってきて、読むだけで満腹になれる良書。
お洒落に気取るわけでもなく、蘊蓄をひけらかす衒学さもなく、食レポが極端に誇張されてもいない。かといって変に謙虚にもなっていない。フランスでの生活やそこで思考したことに根差す食生活が、心躍る筆運びで書かれており、素直に私の胸の内に入ってきてすごく元気になれる。
特に「食」がテーマの本なのに、必ず「人」がいるのが良い。
何を買うにしても必ず人との会話が発生し、食べる以外の時間や新たな価値が産まれている様子を読めてとても心の健康に良い。著者だけでなく、食材を売る人たちも食への想いが大きいからこそ、本書のような素敵な時間が醸成されるのだろう。いいなあ。
余談:
学生の頃、イタリアの豊かな地域色を日本での地方創生に生かせないかというフィールドワークを日伊両国で行ったことがある。あれから7,8年くらい経つが、本書を読んで(フランスだけど)ようやっと気づけたことがある。そもそもこれは問題提起から間違っていた。
そもそも地域色が豊かなのは、不便さと隣り合っているのだと思う。本書では、フランスにはドレッシングの種類が極端に少ないということが例として挙げられていたが、日本ではそういった不便がほとんどない。ファストフードの充実、スーパーやコンビニのラインナップの充実。いつでも、どこでも、食べたい味を頂くことができる日本はあまりにも便利すぎて、手間をかけてまで料理をするという人は少ないのだろう。
一方で、フランスやイタリアはそういった便利なおいしさが少ない(フランスは行ったことないので憶測、なんならイタリアもかなり前の話なので現状は全く知らない)ため、自分で作るしかない。結果として原材料となる農作物等で差別化が発生し、地域色が豊かになっていくのだろう。
昔していた勉強に新たな発見がもたらされる、これだから読書はやめられない。(とはいえ当時気付きたかった…….。フィールドワークやり直したい…….。)