一汁一菜でよいという提案
土井善晴(2021)
新潮文庫
要約
表題の通り、日々の食事は一汁一菜でよいと提案する本。一汁一菜でよい理由の中で、周囲の人々との関わりや、一汁一菜に至るまでの歴史、著者の遍歴などが語られる。多種多様な一汁一菜+ごはんの写真を楽しむこともできる一冊。
感想文
「~なのです」という言い切る口調なのに、文章のいたるところに慈愛が溢れていてすごく暖かい気持ちになれる。
特に、著者の幼少期の話には心の温まるエピソードがたくさんあり、もう、なんというか胸いっぱいになっちゃった。焼き魚を綺麗に食べたことを母親に褒められ、それが原体験になっていることとか、もう、、、、素敵すぎるし共感しちゃうしで泣きそうになる。
また、表題の「一汁一菜でよい」という提案。読めば読むほど納得感が増してくるすごく良い提言。
単に一汁一菜いいぞと主張しているのではない。大事なのは一汁一菜を生活の基盤に据えること。そうすると、手のこんだものをつくるときとのメリハリが産まれ(本書ではハレとケが多用されている)、毎日毎日献立に悩まされる必要がなく、継続することで些細な変化を楽しめるようになる、など忙しない現代人に刺さるメリットがたくさん出てくる。生活の「土台」に一汁一菜、その上でフレンチやイタリアン、ファストフードやコンビニ飯などをいただく。私にとってかなり目から鱗な考え方だった。良い。
最後に、本書は写真の説得力がありすぎる。
ほとんど一汁一菜、白ご飯の写真なのにどれもがつややかで魅力的。
どんな腕利きカメラマンが撮っているのかと思えばなんと著者本人。自身のつくったものの魅力を最大限に引き出せるのは本人しかいないということかもしれない。