エッセンシャル思考
グレッグ・マキューン(2014)
かんき出版
要約
現代社会は多様性と情報に満ちている。豊かさであるはずのそれらが人々を散漫させ、成果をあげることを阻んでいる。本書では表題の通り、エッセンシャル(必要不可欠)なことだけ実行するための方法を提唱している。本質を見極め、自身にとって本当に必要なことのみに絞ることで素晴らしい成果を上げられるとしている。
感想文
タイトルが内容の99%を占めていながらも良書。
多くのビジネス書はしばしば、豊富すぎる例えとキーワードの連呼に終始するが、本書は比較的多くの方法論を語っており、実用に富んでいる。
本書では思考や言動での引き算を推奨している。なんでもかんでも抱え込む足し算でなく、本当に必要なもののみを選び抜く引き算である。しかし引き算って難しい。もったいないばあさんを幼少期に浴びて育った足し算タイプの私は、何かを捨てるためには心を痛める必要がある。そんな中、以下の言葉が目を引いた。
失うものを冷静に計算し
p.172
これは今までにない視点だった。なるほど、足し算とはいうけれども、実際は足し算になっていない。足し算という選択をとることで、引き算という選択肢が捨て去られている。なんでも抱えているように見えて、実はその時々で必ず何かしらの可能性を捨てている。
言われてみれば確かにそうだが、あまり意識したことがなくなるほどと思った。この考え方は取り入れていきたい。
最初にも述べた通り、本書にはエッセンシャル思考でいるための方法が多く書かれている。ああしたらどうか、こうしたらどうかと次から次へと提案がなされる。もちろん、既に実践していたり、あまり納得できないものもある。しかし提案の母数が多いため少なくとも1つは何か自分の琴線に触れるものと出会える。したがって良書。
以下、メモ。
「どれくらいの価値があるか」と考えるかわりに、「まだこれを持っていないとしたら、手に入れるのにいくら払うか?」と考える
p.185
悪い習慣を変えるためには、行動自体よりも、それを引き起こすトリガーに着目すべき
p.262
余談
本書を読んで改めて自分の人生に何が必要で、何が不要かを考えた結果、1つの気付きがあった。
人生で辿り着きたい地点がない。
要不要を振り分けするための基準となるものがそもそもない。「あれしたいな、これしたいな」や「あれほしいな、これほしいな」といった願望レベルでの望みはあるが、自分がどういう人生を送りたいか、自分にとってどういう生活を毎日繰り返すことがベストなのか、それらが全く明確になっていない。
逆説的に、今の生活への満足度がそれなりに高いということかもしれない。人生をどうしたいかという見通しがないと自覚した上で、改めて考えてみても、現状への不満や将来への展望がすぐには思いつかない(じっくり考える必要があると本書で言われているので、しばらく考え続けたいとは思っている。)
欲を言えば色々出てくることはある。特にQoLまわり。もっと広い場所、もっと部屋数の多い場所、ベランダも広くて、都市ガスで、コンロは3つあって、書斎があって、南向きで日当たりが良くて、都心へのアクセスが良くて、でも閑静で…..。
でもそれはあくまで「欲を言えば」の話であり、絶対実現したいかというとそうでもない。実現できないならできないで、幸せに生きられると思っている。
無欲……?
こんな個人ブログを運営しているのに、無欲……?
まあ、年末、厄年が終わるころまでにはある程度の方向性を出したいな。