プロジェクト・ヘイル・メアリー下
アンディ・ウィアー, 小野田和子(2021)
早川書房
要約
太陽を喰らい人類を絶滅の危機に晒す微生物アストロファージが唯一繁殖しない恒星、タウ・セチに到着し、エリディアンという知的生命体のロッキーと共同研究をする主人公は、タウ・セチとその衛星のアストロファージをサンプリングすることで、アストロファージを食べる微生物が存在することを突き止める。あとはその微生物を互いの星に持ち帰ればミッションは達成される。親友と呼べるほど仲を深めた二人が正反対の方向へ船を進めた矢先、主人公はロッキーにトラブルが発生していることを知る。故郷に帰るか、親友を救うか、究極の二択を迫られる。
感想
面白かった……..けど………..傑作………………???
いや、前評判が良すぎたのだろう。
あまりにも多くの人が傑作と連呼するものだから、期待値が高くなりすぎていた。
そしてふたを開けてみれば、これ、インターステラーでは?
先に言っておくと、面白くなかったわけではない。むしろめちゃくちゃ面白かったし、すごく好みの展開である。
ただ、好みの展開であるからこそ、こういう話の結び方は様々な作品で見られることを知っている。インターステラーは最たる例だろう。あれも、「故郷を救うというミッション」「自己犠牲、自分自身」「愛する人」の各要素の間で揺れ動く物語である。宇宙人こそ登場しないものの、最後には納得度の高い大団円も迎える。
面白いのだけれど、展開に新鮮さはない。ガイ・リッチーの映画をみるときと同じ感覚で読んでいた。彼の監督作群も、面白いんだけどクライムアクションとしてはほぼ展開が同じである。そういう感じ。
あと、私は理系学問に疎いのも問題かもしれない。ジャンル「SF」という非常におおざっぱな解像度でしか作品を眺めることができなかったのは反省点である。
ただ1点、本作にしかない良さを発見することもできた。
それは、ワオである。
下巻になって、ワオが激減する。これは1)ロッキーとの生活に慣れてきた2)様々な問題・困難と遭遇し余裕がなくなっているの2つを読み取ることができる。上巻のワオからますだおかだがちらついていたおかげで、私はこの心情変化に気付くことができた。ある意味で著者の描写力の賜物とも言える。
以上、とっても面白かったのに、高くなりすぎた期待値を越えることはできなかった作品でした。テッド・チャンとかもそう。評判を見聞きしすぎるのもよくないね。