聖なる怠け者の冒険

聖なる怠け者の冒険

森見登美彦(2016)

朝日文庫

再読感想文

掛け値なしに面白い。

最近の私のトレンドワードに「プロセス」があるが、まさにそれを象徴した作品だと思う。(プロセスについては君のクイズ月と六ペンスで散々語っているので省略)

とにかく読んでいて楽しい。登場人物の掛け合いや、ワードを聞くだけでわくわくするようなヘンテコな組織、説明がないまま存在感だけを残す五代目、文章を追うことそのものがとにかく楽しい。

加えて、日常と冒険を行ったり来たりするのが良い。言い換えれば緊張と緩和である。苔むすほどに眠る描写は読むだけで気持ちが良いし、土曜俱楽部から螺旋階段を上っていく描写はどきどきわくわくである。安心できる日常も、心が動く冒険もあって、まさに良いとこどりである。

本書には目から鱗が落ちるような衝撃的な発見も、心に染みる人生訓もない。あるのは「充実した土曜日」を過ごした人々の顔ぶれである。もうね、心の底から笑顔になれる。屈託のないとはまさにこのことで、こういう感想文を書いているのが馬鹿らしくなってくる。

いや~、ほんと良いわ。