お静かに、父が昼寝をしております
母袋夏生(編訳)
岩波少年文庫
要約
ユダヤの民話32篇と、創世記から6篇、全38篇の民話集。
感想
とにかく楽しい。
少年文庫ゆえにとても読みやすく、さくっと楽しめる。
私のお気に入りは「塔に閉じこめられたソロモン王の姫君」。この手の寓話に珍しく、高慢な王が自身の無知を恥じている。何らかの行動を反省する悪の王様は想像つくが、自身の「無知」を反省するのはあまり見ない、と私の経験則として思う。
それからあとがきにもある通り、ユダヤの民話なだけあって頓智や知恵で切り抜ける話が多い(選集なので編者による恣意性はあるだろうが)。本書で集められた32篇の民話に関して言えば、概ね知恵で切り抜けめでたしめでたしとなる話が多く、安心して楽しめるのも良い。
最後に、創世記の全6篇について。一般常識として、また、映画のオマージュの元ネタとしてある程度のあらすじは知っていたけれども、こうして物語として読むのはほぼ初めてで、思っていたより楽しめた。編者があとがきで「物語の宝庫」と語っているように、ひとつひとつが機知とユーモアに富んでいてすごく良かった。