作品詳細
The Vision 1/2
トム・キング, ガブリエル・ヘルナンデス・ウォルタ, マイケル・ウォルシュ, 石川裕人, 今井亮一(2020)
ヴィレッジブックス
感想
寓話的な面白さ、ヒューマンドラマとしての面白さ、コミックとしての面白さを詰め込んだ欲張りセットな名作。
(リーパーを除いて)明確な悪人がおらず、登場人物たちの心情をそれぞれ理解できてしまうからこそ味わい深く、文学的素養も携えた作品となっている。
特に素晴らしいと感じたのは、ヴィジョンがワンダ、ヴァージニアそれぞれと愛し合うシーン。この文だけ読むと、ヴィジョンが大変なプレイボーイか浮気者のように見えるが、全くそうではない。ヴィジョンは二人とも愛し、二人もヴィジョンを愛し、各々が相手に対して愛情をもって接していることがよくわかり、読者としては心苦しくなってしまう。ヒロインは一人にしないと…….。
また、都度都度挿し込まれる要素が洒落ているのも良い。
ヴィンが朗読するヴェニスの商人が定期的に聞こえてくることで、物語の空気の形成に一役買っているのは言うまでもない。加えて、P対NP問題、ミッキーのイラスト、倒してきたヴィラン37名など、特徴的なオブジェクトが多数登場するので読んでいて飽きが来ない。
そして何より、絵が良い。
シリアスな雰囲気にぴったりとマッチした絵で、無駄がない。大胆なコマ割りで緩急がよく効いているので、読みながら自身の感情を物語に任せることができる。
特に好きなのは二巻冒頭のワンダとのピロートークのシーン。明るくて幸せそうな雰囲気がありありと伝わってくるから微笑ましくなるし、だからこそ直後のヴァージニアとのシーンがより冷徹なものとして印象付けられる。このシーンだけだと悲しいけれど、終盤にて、やはり暗い部屋ながらもヴァージニアとの愛を確かめ合うことで少しは浮かばれたのかなと思う。切ない……。もっと正直になろうよ……。すれ違いものはディスコミュニケーションが原因なことが多いから悲しい…….。
総括すると、絵良し、内容良し、キャラの関係性良しでとっても面白かった。
余談
あまりに面白かったから作者さんを調べたら、DCの作品がほとんどで、少し残念な気分(私はマーベルしか知らない)。これを機にDCも…….、でもいいけど、絶対沼だよなあ……..。マーベルがそうだったもん。