おいしいものには理由がある
樋口直哉(2017)
角川書店
要約
作家であり料理人でもある著者が、全国津々浦々の第一次産業の現場に取材し、表題の通りなぜそれらがおいしいか探っていくルポルタージュ。
感想
読んで良し、学んで良し、食べて良しの良書。
読んで良しについて。
著者が作家でもあるため、筆力が非常に高く、読んでいるだけで登場する食べ物を味わっているような気分になれる。生産者の人間ドラマも、真に迫る書きぶりで次へ次へと読み進められる。
学んで良しについて。
とにかく私が無知なだけではあるが、日本の第一次産業の多様性に驚かされる。経木で包む納豆の存在や、鶏の調理方法によって異なる育て方など、とにかく「へぇ~」の連発である。また、農地一つとっても、そこに住む生物たちと自然の関わりがあまりに多くて驚かされる。動物と、微生物と、山と、海と、太陽と、人間らの循環した関わりは、多くの学びと気付きを与えてくれる。
食べて良しについて。
文字通り、登場する食べ物たちを買って楽しめる。とりあえず下仁田納豆を頂いた。大豆本来の味がしっかりしていて、柔らかく、とても美味しい。他の食べ物も食べるのが楽しみである。お財布と相談だけれども…….。
以上、三方良しの、食への興味の入り口として最適な本だと感じた。