アオイガーデン
ピョン・ヘヨン, きむ ふな(2017)
クオン
感想
「今を生きて、未来をつくる韓国文学」という言葉に触れた直後だからか、あまり心が動かなかった。
迷宮入りした事件、子供置き去り事件、MERSなど、モチーフは多くあるけれども、結局それらの出来事に対して「未来をつくる」ような描写もなければ意志も見受けられない。それが、社会の希望無き暗部を書いているというのならばそれまでだが、どうにも首を傾げてしまう。
またとあるサイトでは「ハードコアなワンダーランド」と紹介されているけれども、私が読む限り、作品の内容はワンダーランドというにはあまりに「俗」。山尾悠子氏の作品のように、天の鯨や心臓を咥えた巨嘴鳥、夢喰い虫等が登場するでもなく、物語の中心となるのは人間。(犬、猫、鼠、象など動物は出てくるが、それとて現実の範疇。)
面白くないことはない。淡々とした筆致で描かれるグロテスクで希望のない描写は、誰にでも書けるものではない。とはいえ、私に刺さりはしなかった。