モモ

ミヒャエル・エンデ, 大島かおり(2005)

岩波少年文庫

感想

名作というのは言うまでもないのだけれど……

カシオペイア、何者????

彼の能力だけ反則気味で、クライマックスの灰色の男たちから逃げるシーンだけなんとなく納得がいかず、本を閉じるまで尾を引いてしまった(もちろん、お面白かったのは事実だが)。モモの類まれなる勇気と愛が、世界を時間泥棒から救ったことは間違いではないのだが、それにしたって先を見通せるカシオペイアのせいで100%モモのおかげとも言いきれないのが、私としては少し残念。

これ、色々調べてみたのだが誰も同じようなもやもやを抱えていない。そんなことある?

蓋し、カシオペイアはモモのメンター的な存在なのではないだろうか。<子どもの家>で管理する大人と対になる存在。(時間を早く進めようとする時間泥棒との対比でもあるが、モモにとってどういう存在かという視点で話を進めるため考慮に入れない)

モモは、作中一貫してカシオペイアの指示を受け入れている。時間を遅く進むカシオペイアについていったからこそ、モモは時間泥棒に毒されることなく信念を貫けたと考えられる。穿った考えになってしまうが、子供たちを先導する大人が間違っていると子供も誤ってしまうという話で、なんとも示唆的である。

色々書いてきたが、物語としての完成度があまりにも高いので、多少のつっこみどころなんて蹴散らして読める。しかも、再読への耐性が高すぎる。大人になってから初めて読んだけれども、月並みながらもっと早く出会いたかった。