ここはすべての夜明けまえ

ここはすべての夜明けまえ

間宮改衣(2024)

早川書房

感想

釈然としないのは、読者である私が夜明け前でなくバリバリの昼間を生きているからだろう。

最後に「なにもかもまにあわなかったんだけど」と主人公は述懐するが、「だけど」で全部を洗い流すんじゃないよ!という気分。

理解はできる。主人公の生きる地球には、生物も、植物も、ほとんど何もない。辛うじて生きている人間も、約束された終わりをただ待つのみである。だからこそ、「まにあわなかったん『だけど』」という心情になるのだろう。でも!読者である私の地球は!ばりばり現役だから!そういうバックグラウンドを持った私が読んでも、共感はもとより良いともあまり思えなかった。

正直、本作に期待しすぎていた。文体や設定の目新しさに引っ張られて、作品の思想もドラスティックだと、私を驚かせてくれるだろうと期待してしまった。蓋を開けてみれば、罪を背負って生きていくという古典的な結論で、肩透かしを食らった気分である。

読ませる力は十二分にあったからこそ、本作を好きになれなくてとても残念。