センスの哲学
千葉雅也(2024)
文藝春秋
感想
センスについて丹念に言語化し、かつ平易な文章で展開していて、良い本だと感じた。
一方で、冗長さが目に余るようにも感じてしまった。もちろん、本書に沿うならばそれもまたリズムであり、あくまで私の持つ枠からはみ出てしまっただけなのだろう。とはいえ、後半第五章からの展開が、1~4章(特に3,4章)の内容を行きつ戻りつしてふらふらしており、「さっきも聞いたなあ…….」が頭の中で連発し、退屈に感じてしまった。
ある意味で、本書に登場する予測誤差によるものとも言える。というのも、前半1~4章までは、私が今まで言語化できなかった感覚を見事に実践しており、感嘆の連続だった。首がもげるほどうなずきながら読んでいた。だからこそ、後半からも私をあっと唸らせる何かがあるのだろうと予測していた。結果として、先に書いたような反復の展開に肩透かしをくらってしまった。
したがって、本書は基本的に良い本である。冒頭で説明される「芸術と生活をつなげる感覚を伝える(p.12)」や「芸術を生活的に捉える(p.35)」ことには成功しているためだ。実際、本書を読んだことで私は、普段書いている日記をより芸術的に、よりリズミカルにできるのではないかと考え、わくわくしている。
だからこそ、尻すぼみな展開を少し残念に思う一方で、それすらも本書の実践であるとも感じている。こう考えると、本書はかなり読みやすいのに味わい深いという面白い本として捉えることもできるかもしれない。
余談
SERENDIPなるサービスを初めて知ったのだが、ひどない?
まず、要約ができていない。ギリギリ間違っていないとも言えるけれども、この内容で読んだと謳う人間がいたら確実に疑念が浮かぶ。
そして、このような粗悪な要約をサービスとして提供しているところがひどい。ValueBooksでも本の内容を要約するサービスがあるが、無料であり、あくまで参考程度に目を通せる程度である。
サービスとして販売する以上は質を高めるべきで、これは読者に対しても著者に対しても失礼だと思う。