「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?
今井むつみ(2024)
日経BP
感想
もう、なんか、耳が痛い……;; 心が苦しい……;;
「認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策」(表題)が、「コミュニケーション」だなんて……(新次郎構文)
いや、まあ、流石に知っていたけれども。相手の立場を、スキーマレベルから考える。そのスキーマを構築するにしても相手のことを知っている必要がある。相手のことを知るには、自己開示をする。自己開示をすれば相手も自分のスキーマを構築しやすくなる。結果として、円滑なコミュニケーションとともに説明が伝わる。こういうことだ。
わかってはいる……。わかっては、いる、けど……。耳が痛い…….。
今井先生が、笑顔で刺してくる様子がありありと浮かぶ。自分も相手も忘れる前提で仕事をしているかと(p.119)、自分の知識は専門家の知識とは違うと(p.152)、「確認してください」は甘えだと(p.178)、「なんでできていないんですか!?」と言うことほどラクなことはないと(p.208)、そして、ビジネスのファンダメンタルは「コミュニケーション」であると(p.285)。
本書はビジネス書の中でもかなり読みやすいほうだと思う。1頁あたりの文字数もそれほど多くなく、かなりさくさく読み進められて、ページをめくる指は軽やかである。一方で、言葉は鋭い。というより、会社員に刺さりやすい言葉が多く散りばめられていて、大変身につまされる一冊である。