ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2

ブレイディみかこ(2021)

新潮社

感想

前作よりも読み味があっさりしていて、著者の息子や時代の変化を多分に感じられる内容だった。前作では、なんでも疑問に持ち、好奇心旺盛に学ぶ著者の息子の姿が眩しかったが、本作では少し達観したように落ち着いている。それは、彼の中の価値観が固まりつつあるだろうし、母である著者に言わないことが増えてきたことでもあるだろう。

とはいえ、それにしたって、悟るのが早くないかい?と思わないでもない。本作での彼は13歳であり、日本であれば中学一年生である。自分自身の中学一年生の頃を思い浮かべると、ジェンダーや移民問題はおろか、そもそも社会情勢について真剣に話し合ったことすらほとんどなかったように思う。だからこそ、先生と各政党のマニフェストを読む授業には驚愕させられた。

私個人の経験を抽象化するのは危険であるのは承知で言うと、私が中学生だった頃は、まだ社会が個人に対して鈍感だったのかもしれない。勿論その当時からマイノリティとして苦しむ人々がいた一方で、マジョリティがそれに気付けていない時代だったのではないだろうか。そう考えると、様々な社会問題について考える著者の息子は、それまでの時代の無思慮のツケがようやくまわってきたがゆえのもののように思え、時代の移り変わりをよりはっきりと感じられる。

本作の舞台である英国にせよ、私の住む日本にせよ、問題は山積みである。SDGsの掲げる目標が17であるが、それ以上に解消されないといけない問題は大量に存在する。しかし、本書を読むと、問題だらけの社会にも少しばかり希望はあるのだと思わされる。著者の息子のように社会について考え続ける人がいると、後の世代のみならず、著者の配偶者のような前の世代の人間にも影響を与えていく。それはまさに、本書で著者の息子が「LEAD」の中に含まれる「PUSH UP」そのものではないだろうか。