朝と夕
ヨン・フォッセ, 伊達朱実(2024)
国書刊行会
感想
じ、人生~~~~~~~~~!!!!!
暖か……暖かすぎる……。
文学、これは紛れもなく文学。読者の生きる世界とは別個の、完成された世界がそこにある。
ところで私は、主人公のような晩年になる可能性が限りなく低い。漁師を生業にすることなんてありえないし、七人の子供をもうける予定もなく、禁煙して早3年になる。つまり、主人公と私に存在する共通点は、人間であるということをおいて他に何もない。
しかし、だからこそ、主人公と私が人間という共通項で結ばれる限り、たとえそれ以外に通じ合う部分がなかったとしても、私は彼の生と死を心で受け止めることができる。生き方も、環境も、全てが違えど、生きることの根源的な歓び、悲しみ、寂しさは、具体を越えた抽象的なところで理解できる、理解させられる。そこに心からの共鳴と感動が存在するのである。
ノーベル文学賞選考委員会が「言葉で表せないものに声を与えた」と評しているが、本当にその通りで、人間の生死に係る無常を、僅か百数ページ内に、見事に収めている。ちょっと、ええ?すごいね……。なんか、淋しくも、あったけえんだ…….。
余談
本書は、読書カフェGoodRackにてじっくりまったりと、一気に読みきることができたのだが、本当に良い読書体験になったと思う。
これが例えば、仕事の合間に少しずつ読み進めるのでは、これほどまでの感動は得られなかっただろう。読書に集中できる環境で、少しアルコールも含みながら、自分の人生の一部として本書を沈思する。そうすることで、フォッセの文章が心に深く、じんわりと広がっていくのだろう。
いや~、ちょっとこれは。久々に傑作を読んじゃった。
ええ~~??すごいねこれ。
人生だね。人生の全てが詰まってるよ。
良、すぎ。