月の影影の海 上
小野不由美
新潮文庫
感想
理不尽 over the world、救いなんてない。
正直、人に勧められていなければ挫折していたし、読み終えた今でさえ下巻への食指が伸びない。だってずーっと理不尽の連続だもん。しかも主人公が自我のない良く言えば優等生、悪く言えば八方美人タイプでそこまで感情移入することもできない。
とはいえ、筆力は感じられる。ファンタジーならではの独特の世界観や戦闘描写が、抵抗なく入ってくるのは素晴らしい。一文一文が短く簡潔で、なおかつ臨場感があるため、重たい展開が続く中でもすいすい読み進められるのは、本作唯一の救いではある。
ちなみに個人的には猿が好き。正体不明だけれど、なんだかんだ主人公と作中で一番長い付き合いで、かつ定期的に主人公へ内省を促してくれる、露悪的でありつつも憎めないキャラ。下巻でも猿が主人公の味方として付かず離れずの関係が続いてくれたらいいなあと密かに思っている。
とりあえず、下巻の後半までは頑張って読む。そこからようやく面白くなると教えてくれたから。