書けないんじゃない、考えてないだけ。

書けないんじゃない、考えてないだけ。

かんそう

サンマーク出版

感想

ブロガー特有の「バズ」を最優先に考える下卑た根性と、ファミレスのパフェのコーンフレークくらい嵩増しされた引用をギリギリ許せるくらいの、圧倒的な「書くこと」への肯定感がすごく心地よかった。文中で語られる「疾走感」に見事してやられてしまい、誠に不本意ながら楽しく読むことができた、できてしまった。

前述の通り、本書は「ネット上でいかにたくさん読まれるか」に焦点を当てて書かれている。ゆえに、やりすぎと思えるようなテクニックが色々と紹介される。正直、私個人としてはそういう「コンテンツ」的な文章を忌み嫌っているので、とりたてて参考になるとは思わなかった。PVを稼ぐ手段としてそういう技術があるのは理解できるが、同意はできないという心境である。

しかし、そういった数々のテクニックが「役に立つか」はさほど重要ではない。注目すべきは、かんそう氏が文章というものに対してこれ以上ないほど頭を捻り、考えに考え尽くしていることである。彼の編み出した手法に賛同できるかはともかくとして、彼ほど文章に対して真剣に向き合っている人もいないのではないだろうか。

正直、私は彼ほど限界を越えて文章を考えたことはない。思うままに書いて、最低限の校正的なチェックをしているだけである。あまり技巧にばかりかかりきりになると、自分の本当に書きたいものから遠ざかってしまうと考えているからだ。

しかし、それは怠慢だと気付かされた。やりもしないで、ただ「下卑た」と言ってしまうのは、酸っぱい葡萄と同じである。一旦、考えられるところまで考え抜いて、その上で小手先の技巧が不要だと思うならば捨て去れば良いだけのことで、それ以前から拒絶するのはかなり勿体ないし、先の成長は全く見込めない。

重ね重ね、余白が大きくて、字も大きくて、引用がたくさんあって、「読者サービス」の多い本作から蒙が啓かれるのは不本意極まりない。とはいえ本作でも触れられているように、文章を書く人間がコンテンツの選り好みをすべきではないわけで、そういう意味ですごく良い刺激になったと言える。悔しいが、大変悔しいが、学びになったし、良書だと思う。悔しい。