一億年のテレスコープ

一億年のテレスコープ

春暮康一

早川書房

感想

新年一冊目から、言葉にならない……。これほどまでに自身の語彙のなさを恨めしく思ったことはない。それほどまでに本作はあまりにも圧倒的で、人間の根源的な欲求と感性に訴えかけてくる情動がある。少し飛躍した考えになるが、私が読書をする理由も、「遠くに行きたい・見たい」に基づくもののように思えてくる。そのくらい、本作の持つ力は凄まじい。

まず何と言っても、その壮大なストーリーに心を奪われる。「遠くに行き、見ること」とそれに伴う「異星人・他文明とのコンタクトの是非」というテーマに対して、一億、いやそれ以上の時間をかけて答えを見出す。ロードムービーとしてのロマンがあるのはもちろんのこと、ぼかさず明確に回答されているところが読後の気持ち良さを支えていると言える。

それから、未知を喰らいつくした文明が自ら滅亡の道を辿ろうとしているのも、生命の存在意義を考えさせられるようで面白い。何万光年の宇宙を旅しようとも、最終的には「話し相手」を求めるというところに、壮大さと素朴さが入り混じっていて、お話教信者の私としてはかなり味わい深い。

加えて、構成の妙にも目を引かれる。個人的には、設定やストーリーよりも腕があるように感じられる。というのも、本作では、プロローグとエピローグを遠過去と遠未来という形で、本編中として描いているのだ。こうすることで、本来であれば全体の7、8割のところで展開される物語の1番美味しい部分を、最後の最後まで取っておける。実際、最後までチョコたっぷりなトッポ的作品であったことは言うまでもない。

さらにこの構成は、主人公である望の人生そのものを表しているとも言える。遠過去、現在、遠未来に渡る全てに望は存在していて、多少の時間差はあれど、それらは全て同時並行的に存在している。表題の示す通り、全ての時間と空間が望遠鏡としてひとつなぎになっているのだ。だからこそ、遠過去、現在、遠未来の物語を順繰りに語ると、時空間的に一つの方向が生まれてしまい、ひとつなぎの物語ではなくなってしまう。同時並行的に進むからこそ、終章(第九部)で「環が閉じる」ことを可能にしているのだ。

このように、ストーリーと構成がぴったりと合致することで相乗効果を生み出し、本作を唯一無二の作品たらしめている。異星人を始めとした各種設定の作りこみ含め、SFとしても、純文学としても非の打ち所がない作品と言っても決して過言ではないだろう。普段から軽々しく使ってしまうのだが、本作に関しては間違いなく傑作である。

余談

この作品、感想書くのがむっずい!!!!!!

「すごい……すごいよぉ……」くらいしか言うことがないんだもん!!!!!!

筆力向上したいな!!!!!!