スターティング・オーヴァー

スターティング・オーヴァー

メディアワークス文庫

三秋縋

感想

○○というわけさ……

言うてる場合か!!!!!!

○○しちまったのさ……

言うてる場合か!!!!!!

やれやれ……

言 う て る 場 合 か ! ! ! ! ! !

——閑話休題——

もう、とにかく文体が鼻につく。ライトノベルはほとんど読まないが、人にお勧めされたので読んでみたものの、やっぱり拒否反応を起こす。一昔前の洋画の吹き替えじゃないんだから、コテコテのシットコムじゃないんだから、アンディ・ウィアーじゃないんだから、流石にもう少し落ち着いた文章でいてほしい。

加えて、主人公の振る舞いがひどい。物語最終盤の、ハッピーエンドも見えてきた段階で、弁当を半分残して捨てるかね(p.194)。その後でいくら感動的な言葉を述べられても、ちっとも心に響かない。周囲の人間の大切さに気付けても、食べ物の有難みには気付けなかったのかと思うとなんともやるせない。

ただ幸か不幸か、テーマ設定は面白いのだ。人生2週目という転生もので、2週目のほうが上手くいかないというのは、なろう系よりも感情移入がしやすく、終盤で訪れる「救い」の尊さがより強くなる。加えて、「ポジティブもネガティブも表裏一体で捉え方次第」というありがちな教訓も、突飛な設定によってメッセージ性の切れ味が増す。思いついたもん勝ちの創作界隈で、突出した設定を見つけることができたのは素晴らしい才能だと思う。

だからこそ、だからこそ、キャラクター造形と文体の見苦しさがより際立ってしまう。痛々しい主人公はもちろんのこと、人間臭さを感じられないどころかもはやサイコパスにも思えるトキワ、おっとり系しか登場しない女性陣。著者の一作目ということで、粗削りなところも多くあるのだろうが、それにしたって、こう、もう少しなんとかなったのではないだろうか……。

やれやれ、ぼくはラノベを読む旬を、一生逃しちまったのさ……。