私たちのテラスで、終わりを迎えようとする世界に乾杯

私たちのテラスで、終わりを迎えようとする世界に乾杯

チョン・セラン, すんみ

早川書房

感想

相変わらず(と、言いつつチョン・セラン作家はまだ3作目だけど)、光と影のバランスが良く、満足度と心地よさが充実している。訳者や著者本人が触れているように、確かに本作は著者自身の姿がストレートに出ているがゆえに、JJJフィフティピープルには見られない刺々しさや生々しさがある。が、それでも文章それ自体のドライブ感は大変気持ちよく、さっぱり爽やかに読み抜くことができる。

実は、本作に対しては読む前に1つ不満があった。原書から大きくタイトルを改変しているのである。というよりも、タイトルに採用する掌編を変更しているのだ。原書では「아라 의 소설(直訳:アラの小説)」なのだが、邦題では御覧の通り。

まあ、商売として客の目を引くなら邦題のほうが良いのはわかる。アナと雪の女王だって、原題のFrozenではあれほどまでのブームを起こすことはできなかっただろう。とはいえ、とはいえ! 私はその手の改変が好きではない。ゆえに、本を開いて真っ先に飛び込んできた早川書房の翻訳独占権のでかでかとした文字の下にある、邦題とは全く異なる原題を見て、悪印象を抱いてしまったのだ。

あまりにもわかりやすくて恐縮なのだが、これは前置きである。さっさと結論を言うなら、この邦題作、めちゃくちゃ良かった。本作の掌編・短篇・詩の中では一番好きだと思う。もう、ただただ悔しい。邦題変更して大正解じゃんと、まんまとわからされてしまった。いや~、ほんと、悔しいね。

そんなわけで、以下に「私たちのテラスで、終わりを迎えようとする世界に乾杯」を読み終えたときにスマホに急いで書いた感想を載せておく。これを読めば、私はいつでもあのときの感動を思い出せるだろう。たぶん。

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良っっっっっ!!!!!!

諦念と抵抗の狭間で音もなく乾杯する情景が、爽快と陰鬱を同時に連れてきて、ほろ苦い酔いを味わえる。

いやこれ、良っっっっっ!!!!!

いつか崩れ去る世界を前に、為す術のない個人が、せめてもの餞にバルコニーを金に塗り固める。シリコン製は安物だけれど、割れはしない。安くて缶もののワインをぐいっと飲み干す。

力強さと哀愁、オクシモロン的共鳴が私の心をぐわんぐわんと響かし揺らす。

いや~~~~~、良っっ!!!!!