安全に狂う方法

安全に狂う方法

赤坂真理

医学書院

感想

|技法2|感じて踊る

p.105 あなたの心が危険になったら

 答え合わせをした気分。昨日読んだトランス女性の物語と、今回のアディクションはぱっと見タイプが異なるように思えて、その実ケアの中の「踊り」という側面で同じ地平を歩いている。昨日の記事同様、やっぱりまだ言葉にはならないのだけれども、踊りの持つ、力強さ、奥行き、涙を流したくなる切実さ、そうしたすべてに惹かれつつある。

 一方で、悪しきアディクションを良きアディクションでどうにかするという思想は、少し悲しい気持ちになった。生きる限り、アディクションから逃れることはできないという意味で。諦めたところがスタート地点になって、新た人生が拓けるというけれども、とはいえ良きアディクションでさえも度を越して結局悪しきアディクションに転じてしまうというのが私の実感であり、だからこそ、毒を以て毒を制すというのはどうも虚しく感じてしまうのだ。

 ここに限らず、本書への印象は概ねそんな感じで、ちょっと「ん?」となる部分が定期的に見え隠れした気がする。それくらい、「ケアをひらく」シリーズの中では、著者と私の距離が大きいということで、ある種そういう感覚は忌避せずに向かい合いたいと思う。

 ただ、昨日書いた通り、最近の私は精神的に調子が悪い。そんなときにまで心をざらつかせる感覚を大事にできるかというと、そういうわけではない。そんな寛容な人間であれば、そもそもメンタルを病むことなんてないのだから。「踊り」というケアを知れた点で収穫はあったものの、随分勿体ない読み方をしてしまった気がする。体調が良くなったら、読み返したい。