死なないノウハウ

死なないノウハウ

光文社新書

雨宮処凛

感想

 新書の皮をかぶった実用書。膨大な支援サービスが、ケース別に紹介されているので、読みやすくてわかりやすい。非公式パンフレットのような雰囲気があって、とりあえずこの一冊を持っていれば安心という趣がある。

 ただ、読めばよむほど、国の貧しさに悲しくなってくる。貯金が15万円でかけられる言葉が「もっとお金が減ってから来てください」なのも、2人に1人が奨学金を利用しているのも、もうとにかく悲しい。そうした困窮する人々を支える納税者でさえ、五公五民に近い税負担に苦しんでいるのだから、救いようがない。

 とはいえ、漠然とした不安が多少解消されるのもまた事実である。私は以前、flat-というカードショップ経営者による、ネットショップ開設方法動画を見て、会社員としての道が絶たれても、やりようによっては案外何とかなると心が軽くなったことがある(※実際のカドショ経営が大変だということは当然である)が、それに近い心境になった。

 資本主義社会において、とかく金銭が当人の生命線を握るように錯覚してしまう。それは半分正解で、半分間違いである。確かにお金がなければ立ち行かなくなることが多いものの、かといってそこで人生が終わるというわけでもない。みるみる貧しくなっていく日本であっても、社会保障サービスは数百種類あるのだし、補助金や助成金を使いながらカドショのような事業を始めることだってできる。

 あれもこれもと目移りする必要はないが、人生の選択肢とバックアップは、私が思うよりも案外豊富なのだ。それを胸に、今日も社畜生活を全うしようではないか(嫌、転職したい)。