化け猫レストラン

化け猫レストラン

松谷みよ子 他

童心社

感想

 人間と猫、近くで暮らしている割には互いへの感情があまり良いものではなくて、結構ツッコミどころがあったように思う。例えば「こんな晩」や「机の上の白い花束」では、人間の、猫の扱いがあからさまに粗暴で倫理観を疑うし、逆に「おどる猫」では、踊る姿を見られてそれを他言されただけで人間を嚙み殺してしまう猫の情緒が心配になる。人間から見た猫の気まぐれさが、作品そのものにも影響しているようで、ツッコミつつも、どこか面白い。

 ただ、解せないのは「花嫁がふたり」である。猫が、とある新婚の花嫁に化けるも、花婿の機転によって暴かれ、殺されてしまうという話である。概要だけ聞くと勧善懲悪めいているが、この作品では、なぜ猫が花嫁の姿に化けたのかが明かされていない。そのため、単に花嫁として人間生活を味わってみたかっただけという可能性を考えると、釈明の余地なく無残に蹴り殺されてしまった猫が可哀そうになってくる。怪談レストランというシリーズの都合上、あまり長くできないのかもしれないが、もう少し背景の深堀があっても良いのではないかと思ってしまった(読者の想像におまかせというやつなのかもしれない、二次創作が捗るね)。

 それにしても、児童書でカニバリズムを取り入れるとは、中々思いきったことをする。人を食べる人外(鬼や狼男など)ならよく見かけるが、人が人を食べるというのは珍しいのではないだろうか。流石に成人しているので怖いとは思わないものの、これを読んだ小学生がどういう感想を持つのかが気になるところである(小学生の間でSCPとか流行っているし、案外平気なのかもしれない)。