感想
ポケモンは、いる(両目ガン開き)
ポケモン好きにはたまらない、垂涎ものの逸品なのだが、一方でコンセプトがあまりにも狂気的である。だって、農学の博士号を持つゴリゴリの専門家が、「ない」世界の生物図鑑を丸々一冊書き上げているのだから。しかも、現実世界に触れるのは最後の1ページのみで、残りの99%はポケモンが「いる」前提で書かれている。集団で白昼夢を見ていると言っても過言ではない。
とはいえ個人的には、そうした狂った試みを実践してくれる人がいてこの上なく嬉しい。ポケモンは、前提としてキャラコンテンツであるから、儲けのことを考えれば人気キャラのグッズや露出を増やすことが最善となり、マイナーキャラは日の目を見ないことも多い。実際、ポケモンユナイトやポケモンカードでは、特定のポケモンばかりがフィーチャーされ、人気産業であることをつくづく実感させられる。
そんなコンテンツ化したポケモンに待ったをかけてくれるのが本書である。生態系に、メジャーもマイナーもない。みんながこの世界で、ときに協力し、ときに傷つけ合いながら、共に生きているのである。そこには人間の意図を越えたエコシステムが存在しており、全き世界があるのだ。私は、ポケモンのそうした世界観の奥深さが大好きなのである。だからこそ、本書を読んで、涙を流すほど感動するのだ。
ポケモンはいる、絶対に。実写名探偵ピカチュウを見た時の感動を久々に味わえて、大満足である。最高。