感想
頁数を重ねれば重ねるほど面白くなっていく。キャラに深みが増し、各々の想いが募り、雑魚が減って戦況はより苛烈に。小説とは思えないテンポでぐんぐん進んでいくものだから、オープンカーで海岸をドライブするような心地よさがある。人めっちゃ死んでるのに。
それでは以下、個人的に印象深いポイントを挙げていく。
四蔵
八兄弟妹の中で最強の四蔵が、「愁兄」と呼んでいるギャップに心を射抜かれた。絶対pixivに愁×四のカプ絵があるでしょうよ。ええそうですとも。
ギャップというのはエンタメの常套手段なのはわかってはいたけれども、それを避けられるかはまた別の話で、見事に魅了されてしまった。一見冷酷だけれども、実は四男坊らしく可愛げがあって兄を想っているってのは、う~んご飯が進むね。
甚六
パワー馬鹿大好き。無骨と渡り合えるくせに、末っ子っぽい無邪気さ出してくるのもまた、ギャップであり、当然私は大好物である。兄弟妹のことは想っているけど、逆にそれ以外には「どけ!」と言葉を荒げるという、心の線引きがはっきりしている感じが人間臭くて大変良い。
出番は少ないけど、私は超好き。もっと出して。
財閥
主人公「侍」の対抗勢力として警察は正直ちょっと弱いなあと思っていたのだけれども、財閥が出張ると話が変わってくる。暴力に物言わすか、金で物言わすかというある種の異種格闘技であり、めちゃくちゃわくわくする。
そういえばマーベルのヴィランだとバロン・ジモが好きだったりするし、自身で手を染めずに暗躍する敵が好きなのかもしれない。
浜松攻防戦
本作の一番面白かったところ。もうずーっと画が浮かんでいた。各人の躍動する肉体と刀も、号哭する無骨も、剣と銃で舞う粳間も、炎の中で踊る愁二郎も、映像となって脳内で再生されていた。文章の描写力が高すぎるせいで、良くも悪くもドラマのハードルが上がった気がする。それくらい目に浮かぶ攻防戦だった。
それから進次郎のブラフが最っ高に好き。ああいう口先と度胸だけで乗り越えるときのひりつきは、文字情報であっても火傷するくらい燃えるね。一歩間違えれば命を落とすという瞬間での、一世一代の大嘘、いや~たまりませんな。
あとは無骨がヤンデレすぎて面白い。「ようやく俺を見てくれるか?(p.412)」なんてあんた、どんだけ愁二郎のこと好きやねん。浜松攻防戦はずっと激熱だったけど、そこだけ爆笑してしまったよ。愛ゆえの殺し合いなんやね。その気持ちわかるよ(わからん)。