迂回

イヴ・ラヴェ, 加藤かおり

早川書房

感想

 驚くほどのつまらなさ。先んじて書くと、宙吊りな終わり方についての文句はない。スパニッシュホラーを彷彿とさせるためだ。ただ、それを差し置いても描写の少なさ、会話の少なさが気にかかり、良く言えば簡素、悪く言えば雑な印象を受けた。正直、これが3,000円もするのは中々手痛い。

 もう、ただただ本当に、読むのが辛い。ひねりのない一辺倒な展開とだらだらとしどろもどろする主人公。物語として読むには、前衛的では済まされない焦れったさで、私にはどうも手を抜いて書いているように思われてならない。訳者は、サングラスをかけるシーンがターニングポイントだとする解釈がユニークだと書いているが(p.157)、それとて古今東西の映画で見られるありがちな演出であり、手垢がついてる感は否めない。

 蓋し、著者はプロットの定まらないまま書いたのではないだろうか。MCUでは脚本が未完成のまま撮影を始めるらしいし、海外ではそういう行き当たりばったりが案外当たり前なのかもしれない。だとしても、そんな作品を労力をかけて翻訳して、3,000円という高値で売らないでほしいものだが。

 ……もう書くことがない。本来なら1,000文字くらいは感想文を書きたいのだが、書ききってしまった。本当に、つまらなかった。3日でさらっと読めたのはむしろ幸いだったかもしれない。