口に関するアンケート

口に関するアンケート

背筋

ポプラ社

感想

 豆本らしい、あっさりとした読み味。楽しめたのは楽しめたけれども、物足りなさを感じてしまうのは、まあ仕方のないことだろう。ものの数十分、豆本の60頁でホラー小説を読むというのは、小説というよりもネット怪談をインターネット上で読み漁る感覚に近く、そう考えるとピンからキリまである怪談で外れを引くよりは、少なくともマシな読書体験になったのではないかとも思う次第である。

 ただ、流石に情報を開示しすぎではないだろうか。最後の村井翔太の語りとアンケートはいわば「答え合わせ」パートであり、作品の全容を明らかにする内容になっている。すっきりするという点では気分が良いものの、如何せん解釈の余地が残されていなさすぎて、読後の余韻は皆無に等しい。生産と消費のサイクルがどんどん加速していく現代社会のマッチポンプとしては丁度良いのかもしれないが、もうちょっと想像させてくれはしなかったのだろうか。

 加えて、「近畿地方のある場所について」と違って本作は具体的な場所が明示されない。これも相まって、本作はモキュメンタリ―風でありながら、どこか童話・おとぎ話にも感じられて、やっぱり「思ってたんとちゃう」感がある。比べる必要がないのは承知の上で、これならば星新一のショートショートのほうが震えあがるのではないだろうか。