リーダーになる前に知っておきたかったこと

リーダーになる前に知っておきたかったこと

小林慎和

ディスカヴァー・トゥエンティワン

感想

 一度言って伝わらなかったからといって、相手を責めるのでもなければ、自分の能力不足を嘆くでもなく、リーダーはただひたすら執拗に、粘り強くコミュニケーションを取り続けていくのです。

第一章 そもそもコミュニケーションを分かっていなかった p.21

 リーダーという役割はつまるところ、これに尽きるのだと思う。本書内でも語られる通り、「問題は出番を待っている(p.68)」のであり、「答えの出ない状態でも走り続けないといけない(p.82)」のだ。そんな中、小手先の技術をどうこうしたところで、焼け石に水であり、さして効果は出ないだろう。ゆえに、どんな状態であれ「ただひたすら執拗に、粘り強くコミュニケーションを取り続ける」ことこそが、リーダーとしての役目なのだと私は理解した。

 それにしても勿体ない。せっかく著者の来歴がオリジナリティに溢れており、壮絶で数えきれないほどの実績があるにも拘わらず、ありきたりなビジネス書の内容に終始してしまっている。それどころか、ムーアの法則を誤って使ったり(p.26)、弱冠の使い方が間違っていたり(p.185)と、残念ポイントが多い。そんな誰でも書けるようなことでなく、著者にしか書けない、著者の人生を中心に据えた話を読みたかったし、その方が「リーダー」というトピックに限らず学びになることが多かったのではないだろうか。

 個人的に好きなエピソードは、あるトピックに対してfiletype;pdfの検索結果上位100記事を印刷して読み漁るというものである。あまりにも愚直、そして、あまりにもひたむき。中途半端に文献や名言を引用するよりも、当人が自力で編み出した手法を紹介してくれるほうが面白いし、参考にもなる。こういう話をもっと聞きたかったのになあ。

 ともかく、リーダーにできることは「頑張り続ける」ことだけである。もちろん、コミュニケーションをとるにせよチームを引っ張るにせよプロジェクトを動かすにせよ、意識しなければならないことはいくらでもある。とはいえ、それらひとつひとつに注視しすぎるあまり全体が見えなくなっていては本末転倒である。結局のところ、結果が出なくても粘り強く取り組み続ける以外に、結果を出す方法はないのだ。それが学べただけでも十分な収穫ではある。めっちゃ勿体ないけど。