感想
CND!CND!CND!
調整!根回し!段取り!
……だけじゃない!!!
「リーダーになる前に知っておきたかったこと」を読んで学んだ、「ただひたすら執拗に、粘り強くコミュニケーションを取り続けていく」ことの解像度が上がった一冊。結局仕事は人対人で回ってるのだから最適解はなく、状況に応じて対応していくしかないと思っていたが(実際そうでもあるが)、私の理解としては足りないところがあったのだ。
それは、「合理と情理を使い分けること(p.187)」である。つまり私は、理詰めで話す場面と、感情に訴えて話す場面とを一緒くたにした上で、「結局人対人で正解はない」と考えていたのだ。最終的な結論は似ていても、ここには雲泥の差がある。
というのも私は普段から理詰めで会話しがちで、かつ仕事においてはそれが正しいとさえ思っていた。しかし、理詰めですべてが上手く進んでいたら、軋轢なんて生まれない。仮にそれが論理的に正しかったとしても、伝え方によって結果は大きく変わるわけで、そこには「合理」でなく「情理」の必要性が多分に語られているのだ。
また、そもそも「合理」的な判断を下せないことも多い。判断材料が揃っていないものの、判断を下さならければならないとき、もはや「合理」の出番はなく、たとえ不完全でも周りを納得させるために「情理」が必要となるのだ。このように、あくまで「スキル」として感情的なコミュニケーションを習得しておくべきであり、ここが私の盲点だったのである。
ただ、本書ではCNDを始めとした人を動かす能力を「ダークサイド・スキル」と称しているが、案外これは「聞く技術聞いてもらう技術」に似ており、「ダーク」ではなく、むしろ現代社会を生きる上で誰にでも必要なものではないだろうか。
確かに悪用すれば、ミドル層でありながら会社を意のままに操れるかもしれないという点で「ダーク」ではあるものの、孤立し、「イン・ザ・メガチャーチ」のような失敗を重ねるよりよっぽど健全である。そう考えると、むしろ今までの会社の在り方のほうが疑問視できる点が多く、ようやく健康的な企業の在り方にまで引き上げられたと捉えても良い気がする。
会社というものは蓋し、それほどシステマティックに動いてはおらず、合理と情理の両輪によって成り立っている。しかしそれは、何も会社に限った話ではない。家庭だろうが読書会だろうが、論理的な部分と感情的な部分が複雑に入り組んで動いているからこそ、予測不可能な事態が次々起こるのだ。そしてそれに対処し、人生を豊かで幸せなものにするために、「聞く技術聞いてもらう技術」もとい「ダークサイド・スキル」が必要になるのだ。
余談
やたらめったらカルロス・ゴーンが登場する。逃亡前に書かれたものだから、なんともこう、味わい深い。
メモ
定期的に読み返したい言葉を以下にメモしておく。
- ミドルの人たちに求められているのは、表向きファイティングポーズを維持しつつ、裏で先を見通したネゴシエーションを進めておくしたたかさだ。(p.53)
- いったん「あいつはそういうやつだから許してやれ」という空気をつくってしまえば、堂々と正論を述べることができる。ダークサイド・スキルとしては、そういう立ち居振る舞いができるように、普段からCNDをしておくことが重要なのだ。(p.75)
- 結局、こちらから積極的に取りにいかない限り、入ってくる情報には部下のフィルターがかかっているのである。(p.159)
- まずは相手にしゃべらせる、そのためにどれだけ効果的な質問が出来るのかが重要なのだ。(p.161)
- 部下のために7割の時間を使う(p.165)
- 「まだはもうなり」(p.179)
