女性管理職の教科書

女性管理職の教科書

小川由佳

同文舘出版

感想

 以前、ある活躍されている女性管理職の方の講演を聴きに行ったことがあります。いろんなお話があった中でも、「人と関わることが好きな女性なら誰でも、ぜひ管理職にチャレンジしてほしい」という彼女の言葉が心に残りました。

p.253 おわりに

 たくさんのアドバイスが紹介されていたけれども、あとがきの何気ない一言に示唆が富んでいたように感じた。つまり管理職という仕事は、人好きであることがもはやアドバイスするまでもない大前提となっているのである。もちろん人嫌いであっても管理職は務まるだろうが、少なくとも本書の目指すところには人好きが背景にあり、承知しておくか否かで読み味が大きく変わってきそうに思う。

 とはいえ、本書は良くも悪くも管理職の「教科書」である。管理職の基本を網羅的に取り扱っているという点で良い教科書でもあるし、特筆すべき面白ポイントがないという点で悪い教科書でもある。私は今日から初めてのチームリーダーとして働くので、総復習としてある程度勉強にはなったものの、考えを発展させるといった応用的な読み方ができるほど骨のある内容でもなかった。

 そもそも管理職、ひいては仕事に絶対解がないのだから、ビジネス書がふんわりした内容になるのは致し方ない話でもある。ただ、銀の弾丸がないからといってありきたりな内容に終始するのは、書籍としての意義を疑ってしまいもする。いくら教科書であっても、一次資料でなくビジネス書から引用してくるのは、下請けの下請けの下請けが跋扈する日本社会を彷彿とさせて悲しくなってくる。

 ともあれ本書の内容が間違っているわけではない。基本中の基本であるものの、それらをすべて確実にこなしている人間はそう多くない。ある意味、本書のような書籍が出るうちはまだまだ私でもリーダーとして活躍できる余地があるということである。CNDの心を忘れず、働いていきたい。働きたくない。