もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら【読書感想文】

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら/ 岩崎夏海(2015), 新潮文庫

要約

ドラッカー「マネジメント」読本。

新潮文庫から出版されており、小説のように思われるが実際はビジネス書。

弱小高校野球部のマネージャーになったみなみがドラッカーの「マネジメント」を頼りにチームを甲子園へ導くまでの過程を描いた物語。定期的にマネジメントからの引用があり、マネジメントを未読の人でもその片鱗を味わうこともできる。

感想文

進研ゼミの漫画を読んでいる気分になる本。

私が知った時には有名になりすぎていて、今更読むのもなんだかなと先送りにしていたが、改めて読んでみると面白い。

福音書(原著から上田惇生氏が編訳したもの)の福音書(もしドラ)で、ろ過機のように重要ポイントがこれでもかというほど抽出されているため、引っかかることなくさくさく読み進められる。

一方で、新潮文庫から出版されていたとしてもこれを小説と言い張るのは無理がある。基本的に「マネジメント(ドラッカー)」が物語よりも先んじて存在しており、それに合わせて登場人物が動くので、行動要因とその結果が合致しすぎている。丹寧に設計されたプログラミングを実行した時の様である。

冷蔵庫の女が登場したのも、小説としてあまり楽しめないことに拍車をかけている。主人公女性だけど。単に私の好みでないだけだけれども。

したがって、どういう本なのかわかった上で読むのが良いと思う。私は初めからビジネス書としてこの本と相対したので学びにもなったし、とても良い本だとも思う。

以下、印象に残った箇所を一つ備忘録として残しておく。

働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が不可欠である。(七四頁)

第三章 みなみはマーケティングに取り組んだ(p.95)

ここは自分にはなかった視点でかなり学びになった。私は何かをマネジメントする立場ではないが、会社員として働いているときにやりがいを感じなければ、おそらくこの3つのどれかが欠けているだろうと考えられる。