
きみのお金は誰のため
田内学
東洋経済新報社
感想
ボスの話す経済はキレイごとだと思っていたところもあったんです。だけど、”ぼくたち”が広いから、そう感じることができるんですよね。
p.222
良い本だった。お金と社会に誠実に向き合い、何をどう考えて行動すべきかの判断材料を中立的な立場から投げかけている。途中、主人公が「キレイごと(p.222)」だと感じる場面もあるものの、そうした綺麗事に真剣に取り組めるからこそ、個人も社会も豊かになっていくのだろう。ゆえに、本書を読む人が1人でも多く増えれば、多少なりとも希望のある未来を臨めるように感じられる内容だったのは確かである。
ただ、その一方で、本書を読んで感銘を受ける人は、別に本書を読まなくてもそれなりにお金や社会へのリテラシーを備えているようにも思えてしまう。本書はいわゆる進研ゼミ的な一冊であり、とりたてて物語が面白いわけではなく、教科書的な内容に終始している。ゆえに、経済学にさして興味のない人は、おそらく本書を読み通すことが難しいのではないだろうか。
とはいえ、私自身は色々と思うことがあった。特に、お金の向こう側には必ず誰かがいて、一人一人のお金の使い方がそうした人々、ひいては社会を変容させていくということは、当たり前っちゃ当たり前なのだけれども忘れずにいたい。そして、「ぼくたち」の範囲を広く感じられるような豊かな人生で在りたい。