感想

　面白かったけど、「我が友、スミス」「冷ややかな悪魔」に続いて、構成が同じすぎやしませんか？　奇抜な視点と独特なメタファーを駆使して、始めは主人公がストレスフルな状況を打破していくのだけれども、最後になって思いもよらぬ盲点にくじかれ、しかしそれでも一皮むけた爽やかな自分が現れて終わる。いずれもこのような展開であり、流石に3作目ともなると予想できてしまうし、それが当たってしまうから質が悪い。

　加えて、必ずジムが登場するのも、お家芸的に面白いのかもしれないが、短期間で3作も読んでいると流石に食傷気味である。ジムやボディ・ビルの造詣の深さゆえのニッチな小ネタはもちろん声に出して笑えるほどではあるものの、う～んどうにも飽きてくる。この調子だと、今後もまだまだ筋肉関連の作品が出てきそうだが、少し期間をあけて読みたいものである。

　なんだか、感想を書く気になれない。読み味が、以前読んだ2作と全く同じで、これ以上書くことがないからである。編集さんは、どこかしらでこのフォーマットの酷似に気づけなかったのだろうか。あるいは、気づいた上でそれを許容としてゴーサインを出したのだろうか。著者の思惑よりもむしろ、編集の意図のほうが気になってしまう。

　ともかく、石田夏穂さんは面白いのだけれども、短期間にたくさん読む作家さんではない。エンタメ小説以上の深みもあるとはいえ、それにしたって似た作品が多すぎである。せめてオチの後味を変えるなりしてくれれば良いものの、揃いもそろって爽やかエンドなものだから、逆に気持ちよくない。読者の我儘なのは承知である。その上で、もう少しひねった、あわよくばもう少し長めの作品を読みたい。短篇が多いものの、確かな実力はあるのだから、様々な作品に挑戦してほしい次第である。