とびきりすてきなクリスマス

とびきりすてきなクリスマス

リー・キングマン, 山内玲子

岩波少年文庫

感想

 とびきり素敵なクリスマスだぁ……。

 プレゼントをくれる兄が不在となったとき、大体手段を購買でなく創作で補ったのがすごく良い。材料が潤沢にあるわけではないけれど、あるものでやりくりする。そこに物質的な豊かさはないかもしれないが、主人公エルッキや彼のお手製プレゼントを受け取る家族の心は間違いなく豊であり、私までもが充実感に満たされた気持ちになる。

 また、エルッキのつくるプレゼントが、10歳らしい創意工夫に溢れている点も素敵である。例えば妹エラナへのプレゼントは人形だが、古着の端材をドレスに使ったり、オートミールの缶を家に見立てている。一方で父や兄ミッコには木の枝をプレゼントして「ぼくにも、木彫りのしかたをおしえてね(p.126)」とねだる可愛い一面を見せたりもする。

 このように、本作には資本主義社会が置き去りにしてきた、非効率な愛がたっぷりと詰め込まれている。豊かな自然に包まれながら生きるエルッキと彼の家族の姿は、周囲の雪をも融かす温かさに満ちている。だから、東京でのリーマン生活に疲れた私の心は深く癒されるのだろう。

 本作は児童文学でありながら、大人でも読み応えのある、まさしくクリスマスプレゼントのような作品だった。メリークリスマス! ハッピーホリデー!

余談

 マサチューセッツ州はフィンランドの移民が多いのだそう(訳者解説にて)。

 エルッキってアメリカの名前じゃないよなあと思っていたけど、そういうことだったのね。地理も学べる、素敵な作品でした。