究極の鍛錬【読書感想文】

究極の鍛錬/ ジョフ・コルヴァン(原著), 米田隆(訳), サンマーク出版(2010)

【要約】

大きな成果をあげるために行うべき鍛錬について書いている本。

一世を風靡した天才たちだって我々と同じ人間なのに、なぜ我々は彼ら彼女らのような成果をあげられないのだろうという疑問を出発点に、天才が天才と呼ばれるまでに行ってきた鍛錬にどのような共通点があるかを豊富な実例とともに考察する。

前半では、生まれつき備わっている才能や知能は必要なく、一人での練習時間が何よりも重要であり、かつその練習の内容は何等かの課題を解決するためのものであるべきだと主張する。

そして後半では、具体的にどのような鍛錬を行えばよいのか、基本から応用までを語り、終わりには究極の鍛錬に至るモチベーション・情熱について解説している。

【感想】

一貫して「才能は関係ない」と主張しており、努力している人ほど励まされる1冊。

僭越ながら私はネットワークエンジニアの端くれとして。しごできになるため、CCIEを取得するために日夜学習に励んでいるわけで、自分のやっていることを肯定してくれるのはかなり嬉しかった。

正直、内容に目新しさや目から鱗の新事実のようなものはない。したがって、何かを得るために読むと物足りなさを感じるかもしれない。一方で、様々な努力と成果が結びつく事例を見て「私も頑張ろうっと」と思えるような人間には非常に実りのある一冊。

(感想ではない余談)

おそらく、学生時代の私が読んだらつまらないと一蹴していたと思う。昔の私は本に知識を求めていた。それがたとえ小説であっても。

本の内容を「知る」ことが読書だった。

メディア史とは何か、夏目漱石の坊ちゃんはどういう話なのか、プレゼンを上手にするにはどうすればよいか。

本で自分の知らないことを知り、自分の可視領域が広がっていけば良書。既に知っていることばかり書いていて、読んでも自分の見える範囲が広がらないなら微妙だとしていた。

ところが今は、文章を味わえるようになっている。

知らない人の人生を知ったところで私にはなんの益もない。しかし、全く知らない人生を読んで、私は心を動かし、果ては何かしらの行動へと繋がっていく。知識という明確な基準はないけれども、私の中の何かが広がった気がする。深まったと言ってもよいかもしれない。

この、文章を「よく読んで味わう」ことができるようになったのはすごく喜ばしく、年を取ったなあと感じ入ってしまう(23歳です)。

以上。