きみと雨上がりを【読書感想文】

きみと雨上がりを

武田綾乃(2023)

株式会社ポケモン

株式会社ゲームフリーク

【要約】

ポケットモンスターSVに登場する主人公のライバル、ネモの視点で描かれるパルデア地方のもう一つの物語。

主人公とネモの互いを思い合うまっすぐな友情を軸に、ゲームをプレイした人ならにやにや楽しめる小ネタも詰まっている。

オンラインで無料で公開されている他、文庫版がポケモンセンターで6000円以上購入した際の特典となっていた。

【感想】

原作補完ができる良い作品。
原作ゲームで、オモダカに勝利したあとに「私のライバルになってください」というセリフがあるが、正直プレイ当時はそのセリフの真意を掴みかねていた。もちろん、ゲーム内でモブキャラクターがネモは天才だと噂し、それに対しネモが心外の意を表すシーンが存在したりするものの、ネモが主人公のゲームではないため、描写が少なく、考察というよりも妄想するしかない状況だった。(自分の考察力のなさは棚上げしている)

本作はそういったゲーム本編での描写の足りていない箇所を見事に補い、パルデア地方の世界をより深く体験できるようになっている。特に私が気に入っているのは、クラベルがナンジャモの番組に出演する前にネモと出会うシーン。ゲームでナンジャモのジムに挑戦しようとしている間に、別の場所ではクラベルやネモがああいった会話をしていたとわかる、プレイヤーとして自分自身が群像劇の一部になれるわくわく感がとても良い。

余談:
ネモのみならずペパーやボタンの視点で描かれた小説も読みたい。SVの登場人物は皆、個性的で魅力溢れる人物ばかりで、もっとスポットをあててほしいと思ってしまう。(ポケマスがポケモン全体でそういう役割を果たしていると思うが、舞台がパシオに限られてしまうのがおしい)