勉強する気はなぜ起こらないのか【読書感想文】

勉強する気はなぜ起こらないのか

外山美樹(2021)

ちくまプリマ―新書

要約

勉強に限らず何か知らの行動へのやる気・モチベーションについて、構造的に述べられている新書。内発/外発的動機づけ、誘惑、目標設定、周囲との関係、悲観主義、無気力の6つの章にわけて、なぜやる気はわくのか/わかないのかメカニズムを説明し、それを踏まえてどうやる気を出していくかについて提案している。

中高生向けといこともあり平易な文体ではあるが、幅広い層に刺さるであろう内容となっている入門書。最後には著者の薦める読書案内もあり、この1冊から学びを広げていきやすいものとなっている。

感想

この本を手にとり読もうと思う人にとっては益が多くなく、この本を読むやる気さえない人こそ読むべき本。

私が一番興味をそそられた部分は、「無気力」である。そして、無気力を解消するためのこの本の結論としては「小さな成功体験を積み重ねる」だった。

これは非常に難しい解決法で、もう少し深く語ってほしかったように思う(新書なので気になったら自分で調べろということでもあるが)。なぜなら、結局、小さな成功体験を積み重ねるのにも何かしらのやる気が必要なわけで、一旦無気力に陥ってしまうと、外部からの相当な力が働かない限り、それが解消されないということになってしまう。そこで、外部の力に頼らずとも無気力を解消できる方法についてもう少し知りたいと感じた。

一方で、2021年初版の比較的新しい本であるため、マシュマロ実験などの有名な実験のその後の展開にまで触れており、学問が日々アップデートされていることを感じられて面白かった。

余談:

科学的に実証されたと結論づけるためには、三つの条件が必要になってきます。一つ目は、研究対象となっているものをデータで正しく説明できるという「実証性」です。(略)二つ目は、研究の結果が多くの人によって承認されるという「客観性」です。(略)そして、三つ目は、同一条件では、同一の結果が得られるという「再現性」になります。

p.32 第一章 やる気は内からわくのか、外からくるのか

ネットワークエンジニアでもこの視点は大事だと思う。

私のような歴の浅いエンジニアが、誰かに対して技術的な提案や意見を言う際、それらを信じてもらうためには「実証性」「客観性」「再現性」が必要である。

実証性では、文字通り、実際に検証をしてみて自分の意見に含まれる技術が想定通り動くかどうか確認する必要がある。客観性では、公式ドキュメントにしっかりと動作する旨の記載があるかを確認し、再現性は言わずもがな、何回でもその状況を作り出すことができることを検証で明らかにしておく必要がある。

科学者に限らず、ネットワークエンジニアとしてもこの3つを大事に覚えておきたい。