チーム

チーム

堂場瞬一

実業之日本社

感想

 熱盛!!!!!

 スポーツには、あんまり興味がない。熱盛と報道されるけど(今はもう終わっちゃったんだっけ)、その熱量が、いまいち理解できなかった。ところが本作「チーム」は、もう熱盛の嵐。熱い、熱い、熱すぎる。躍動する肉体と、はちきれんばかりの想いが、一本の襷を繋いでいく。熱くならないわけがない。

 個人的には、池上が好き。全くフィーチャーされてないけど、あの余裕たっぷりな感じ、それでいて自分の仕事はちゃんとこなす感じが素晴らしい。3区で大失態を犯した朝倉に対しても、これから5区を走る重責を担う門脇に対しても肩を叩いて労う思いやりもあって、良いキャラクターである。今後の作品にも登場しないのがすごく残念。

 それから、駅伝(に限らずスポーツは何でもそうかもしれないが)は、自然と群像劇になるから面白いと気づいた。ある選手がいて、前後で順位争いをする別の選手がいて、彼らを応援する選手や監督がいる。ごくごく当たり前にたくさんの人間の想いが交錯しており、そりゃあわくわくするよなと、ひとり得心した次第である。

 ところで本作は、会話していないのに会話たくさんあるのが面白い。走っている間は一人なので当然として、学連選抜は各大学の寄せ集めゆえにあまり積極的な会話が行われていない。そもそも合同練習の回数もそう多くなく、前半の「敗れし者」は、メンバー間での親密さをあまり感じられないまま終わってしまった。

 しかし、後半「敗れざる者」に入って一気に会話が増える。これは、誰かと誰かが話をするという意味での会話ではない。走者の独白による会話である。これが、孤独に走る人間とは思えないほど、外に開かれた内容になっているのだ。

 顕著なのは山城の例である。彼は、東海大の脇谷を抜かす際に右太腿裏に違和感を覚える。このアクシデントは、始めこそ小さなものだったものの、着実に彼の太腿を蝕み、やがて彼を窮地に立たせるものとなる。このとき、彼は初めて浦に自ら声をかける。

しかし浦よ、故障ってのはこんなに苦しいものなのか?

p.340

 緩衝材に包まれた山城が、多孔的になった瞬間である。もちろん浦が答えることはない。その場にいないから。しかし、これは会話であり、山城という一人の人間が他者に開かれた瞬間なのである。このカタルシス、熱盛と言わずしてなんであろう。

 時間がないので感想文には書けないが、本書にはこうした会話の枠組みを超えた会話が多く登場する。駅伝のようなスピード感でありながら、駅伝のようなじっくりとした筆致によって丁寧に独白もとい会話が描かれているからこそ、私は物語に深く没入し、また感動することができたのだ。熱盛! 熱盛! 熱盛!!!!!