感想
「チーム」同様、レースが始まってから面白くなるかと思いきや、もやもやするラストで、なんとも締まらない。5分の3くらいかけてじ〜っくり書いた冗長な前準備のストレスの割にはカタルシスが少なく、残念なのが正直なところ。もちろん、結末を読者に委ねる作品はいくらでもあるものの、こと本作のような情熱溢れるスポーツ小説においては、はっきりと結果を明示して、爽快な読後感にしてほしいと思ってしまう。
それから、山城のキャラがぶれているのが何よりも気になる。
一応、最後まで読んだ上では、ある程度納得はしている。しかし、半分くらいまでは「チーム」での山城がほとんどなかったことにされていて違和感しかない。加えて、「メディア向きには良い態度を取る」という設定が完全に忘れ去られており、著者の姿が見え隠れしていて楽しくない。
結局、彼の言動に一定の整合性が取れるのは302ページの「駅伝でもやるならともかく、マラソンは最初から最後まで自分との戦いなのだ」というモノローグでである。このタイミングでないといけない理由もなく、だったら始めのほうで言ってくれたほうがまだ物語に入っていけたと思う。とはいえ駅伝の話になると「あれは一種の気の迷い」だのなんだのごにょごにょ言い訳するし、著者自身も設定に無理があることに気づきながら書いていたのではないだろうか。
それでいて、結局行政の思惑通りなのも解せない。音無は最後に想定外と騒いでいたが、「世界新記録を出すマラソン」という当初の目的はきっちり達成できているわけで、どうも釈然としない。山城にせよ甲本にせよ、最後まで知事の掌の上だったわけで、せめて小説の中でくらい、それに一矢報いる痛快な物語を読みたかった。
だから、山城がペースメーカーとして先頭に立ち、大会をぶち壊してやると宣言したところは、ものすごく熱い気持ちになった。本作で唯一の興奮した点である。しかしやがて、浦や甲本に乗せられて完走してしまうため、置いてけぼりにされた感が否めない。
なんだか全体的に消化不良で、チームのような満足感が全くなかった。曰く、最新作の「4」が頗る面白いらしいので、そこまでは頑張って読もうと思う。気分はマーベルを観ているときのものに近い。エンドゲームのアッセンブルは最高に熱いけど、それまでずっと傑作続きってわけじゃないもんね。しゃーない、しゃーない。
