あなたが政治について語る時

あなたが政治について語る時

平野啓一郎

岩波新書

感想

 ワンピースのあとに読んだ銀魂に対して抱いた感情に近い。SBSやウソップギャラリーなど、本編以外も充実した一冊になっている作品のあとに、シンプルな一問一答と著者コメントのない銀魂のファンアートを見て、どこか寂しく感じた経験がある。今回は、先日読んだ「ナショナリズムとは何か」がなまじ良い一冊だったせいで、本書が霞んで見えてしまったのだ。

 芥川賞作家による切れ味鋭い言論の数々は、為政者だけでなく、読者にも向けられている。各節で取り上げられているテーマのみならず、「政治について考えること」そのものにまで考えさせてくれるのだ。著者個人の経験を端緒に、政治的な問題に切り込む様子はまさに「個人的なことは政治的なこと」を体現しており、多くの視座を与えてくれる。

 ただ、本書はあくまで著者の寄稿した小論をまとめただけのものであり、新書として書き下ろされたものではない。ゆえに、各節前後の繋がりが薄く、じっくりと考えられるようなテンポではない。一応当時の文章に追記があるものの、1行と微々たるもので、どうにも物足りない。脈絡なく読んだならばそう思うことはなかったのだろうが、2日前に「ナショナリズムとは何か」という骨太本を読んだこともあって、もう一歩二歩進んだインサイトが欲しいところだった。

 とはいえ、個人的な教訓も得られた。興味の幅である。

 私は本書を読んで、うんうんと頷きたくなる箇所と、そうなんだ~と流してしまう箇所があった。いわんや興味のあるところとないところでの温度差が激しく、もっと包括的に知っていかなければと反省した次第である。もちろん全てを奥深くまで探求することはできないだろうが、しかし、興味のないテーマを知ることによって興味のあるテーマを深めることもできるだろうから、選り好みせず積極的に情報収集していきたい(最近日経新聞を読み始めた、投資面とか全く興味ないけど、もう少し目を通したい)。

 2026年1月、日本では混迷を極めた衆議院議員選挙が行われようとしており、海外では米がグリーンランドを接収しようと応酬と対立している。遅れる新年度予算委員会によって公共サービスに支障が発生し、世界的な情勢不安によって経済もままならない。弱肉強食のジャングルの復権に際して、自分の言葉で社会を語れるよう、月並みだが、頑張りたい。